最終話 秒速5センチメートル
ただ、生きていた。
うまトマを失い、空虚な日々を生きていた。
うまトマが終わり、松屋通いも終わってしまった。
何も、無くなった。
そんな日々を過ごしていた9月某日
リュウジ氏(@ore825)が以下の動画を投稿した。
https://youtu.be/qAJkKBLsDe4?si=bwcbF9q2cPvEkh2B
うまトマに会える...?
一筋の希望だった。
念の為ぐんぴぃ氏の動画も参考に、作り方を予習。
https://youtu.be/gHt9gcGdh3w?si=nLQUSL5Wh8CE1UH8
部屋着でスーパーに向かった平日午後8時。
2動画を参考にした材料は以下の通りだ。
トマト缶 400g
ニンニク 20g
玉ねぎ 200g
オリーブオイル 大さじ3
ニンニクチューブ 一絞り
クレイジーソルト 2振り
醤油 ひと回し
みりん ひと回し
味噌 大さじ1
砂糖 大さじ1
コンソメキューブ 1個
ほんだし 5g
にんにく、玉ねぎをみじん切りにしてオリーブオイルでいため、トマト缶を加え、各種調味料で味を整える。
なんてことはない工程だが、緊張と不安と期待が入り混じる。
そしてハンバーグと温玉とともに皿に盛る。
おかえり。
震える声でうまトマ(仮)に声をかけ、
あの時と同じように、
秒速5センチメートルの速度で匙を口に運ぶ。
やはり違う。
うまトマより酸味が強い?ニンニクが弱い?
はっきりと絶望した。
何が違う?
うまトマの味を必死に思い出す。
何も
覚えていない。
俺は、もう味も覚えていないうまトマのことをずっと追い求めていた。
そのことにやっと気づいた。
何を食べても、仮に松屋のうまトマを今食べてもしっくりこないのかもしれない。
僕は、僕たちはもうあの頃には戻れない。
初めて会ったときに言ったじゃあないか。
魂が何処にあるか、松屋だ、って
うまトマは松屋で買って食うからこそうまトマなんだ。
どんなに材料や技術を磨いても、松屋で食べるうまトマには勝てない。
うまトマ再現は人体錬成だ。
材料を揃えても成功しない。
最後のピースは「松屋」だったんだ。
そう結論づけたとき、やっと前を向けた。
目の前にあるトマトハンバーグを穏やかな気持ちで平らげる。
きっとこの先は大丈夫だと思う。
また来年、うまトマに会いに行くよ。
-fin-
最後に
今回のレシピは2動画を参考に自己流で組み合わせたものです。
しかも4倍量。
だって家にすき焼きのタレもワインもねえもん。
味の感想としては
酸味と塩味の強いトマトソース。
余りはパスタにしました。
うまトマがまだ売っている地域の方は、どうか一期一会を大切に。
もう無い地域の方、共に来年の夏を待ちましょう。